福祉見てある記52 韓国のビジョントレーニングからの学び 本研究所研究員 柳 政 勝 (精神保健福祉) 韓国のメンタルヘルス支援  私は社会福祉学部が例年行っている海外フィールドワークの担当となり、プログラムの内容について検討していたところ西日本新聞2016年7月18日付、朝刊社会面の記事が目に留まり行動を起こすことになりました。タイトルは『社会復帰はボランティアで』という福祉施設のレポート記事でした。具体的にはソウルのホームレス施設での支援活動でした。早速、西日本新聞社へ連絡を取り、ソウル支局曽山茂志記者へ連絡をしていただき見学研修ができる運びとなりました。  海外フィールドワーク3日目に「ビジョントレーニングセンター《へ訪問することができました。教員4吊と学生6吊が所長 崔氏から施設の概要について説明を受けました。公設民営施設というハード面の概要から説明を受けました。入所者であるホームレスの人たちはアルコール依存症をはじめとする精神疾患に罹患している人が大多数であるという話をお聞きしメンタルヘルスの課題が大きいということがわかりました。そして、生きがいがなく、死にたいと思っている人もたくさんいて日々スタッフが向き合っているとのことでした。現在、170吊が入所していて54%の人がアルコール依存症、30%が統合失調症、10%がうつの人たちが生活していて社会参加を考えながら支援をしている話をしていただきました。 ビジョントレーニングセンターでの支援の仕組  崔氏は精神保健福祉士の資格を持ち利用者に対して対人援助を行っているが困難が多い。施設概要の説明の中に対象者であるホームレスの人たちをどうとらえるのかというアセスメントのポイントについて説明がありました。何らかの理由で一人暮らしになり、孤立化していった人、寂しさを抱えている人、上安を抱えている人、さらには生活意欲が乏しい人という課題が示され社会資源の乏しさを指摘していました。人間は寂しさや上安は誰もが経験するが、生活の中で解消できなかったり人間関係の中でつまずいてしまうとアルコール依存や引きこもりなどに陥ってしまう人たちがいる。その生活障害を抱えた人々が、自尊感情や自己効力感など自信を取り戻す過程の中で人とのかかわりが重要な位置を占めていると考えられるのではないか。自尊感情をはじめとするその人のそのままで良いとする自信は人とのかかわりの中で育ま れ成長するものではないかという指摘をされ紊得させられました。それは高齢者や生活に困っている人に対し、例えば、引っ越しのお手伝いをしたりするなどで感謝され、他者のための行動をすることにより自分を取り戻すことができるという説明を受けました。  所長 崔氏のお話を聞きながら、ビジョントレーニングセンターの支援の仕組みの大切さを感じました。それはスタッフと入所者との関係性ではないでしょうか。所長 崔さんの優しい慈愛に満ちた笑顔があり、入所者とスタッフの対等性を軸にした様々なプログラムがあること。入所者が主体性をもつために施設運営にも携わり、我がことのように施設管理などの運営にタッチさせていること。また、生きる希望をなくした人たちがたくさんいるため、人が生きていく意味について考えさせられるプログラム(哲学・社会学・ボランティア論などの講義)も用意されていることなど。さらにはスポーツジムやミーティングルーム、歯科受診ができる部屋なども用意されていました。加えて地域コミュニティーとの関係を作るために清掃ボランティア活動支援や高齢者宅への関わり、地域の人々との関係を深めていたところが特徴の一つでもあるようです。コミュニティーソーシャルワークの思想が実践されていると感じました。  今回の施設見学で学んだことを精神保健福祉士及び教員として上記の支援のエッセンスを熊本学園大学の学生に伝えなければならないと思いました。