2〜4ページ 創立20周年を迎えたKSN熊本シニアネット 本研究所研究員 守弘 仁志(社会情報学) 熊本シニアネットとは  熊本の高齢者パソコンネットワーク団体の熊本シニアネットが創立20周年を迎えた。会員数も1800人を数えるまでになった。もともと同ネットは熊本学園大学の大学院卒業生がスタートさせたもので、メールサーバーも熊本学園大学のサーバーを使用している。  まず、同ネットの組織などを紹介しておくと、目的として「シニア&若い世代の交流で 明るく生き生きとささえあって奉仕される事よりも奉仕できる喜びを。シニアの孤立を無くし、楽しく学ぶ、遊ぶ、福祉、3拍子で高齢者の生きがい創りを目的に始めました。仲間になりませんか。」また趣旨として『「高齢者の生きがい創り」、「コミュニケーションの場を創ろう」と企画して17年目になります。50代以上のシニアは勿論、10代、20代の青年まで含め老若男女が日々メーリングを主に交流しています。これからインターネットやパソコンを始めたいという皆様、どうぞ以下の趣旨を理解されご入会をお願いします。』  また組織の方向性について「目的:高齢者の孤立を無くし、生き甲斐の創造を図るため、新たな文化的、人的交流の場を提供します。会員相互の研修により、情報技術に関する知識向上を図る。地域の高齢者支援の行政機関等との協働を通して、会員の安全安心を確保する。世代間の交流による相互理解に務める活動」とされている。  入会に際しては要綱として「この会は会の目的に賛同し、事務局に申し出たものによって構成する。加入に際して年齢制限を設けない老若男女、パソコンの得意な人から初心者まで様々な人々が集うネットです。年齢や性別を含めたバリアフリーを実践していきます。ハイキングなどの行事参加などの場合は実費を徴収します。行事についてはホームページの月間予定表、ならびにメーリングリストにてアナウンス予定です。」としている。以上熊本シニアネットHP(https://ksnweb.org/ksn/)より抜粋  また県内に天草、黒髪、龍田、神水、俵山、水俣、嘉島、益城、平成、西部サロンクラブ、玉名、八代、学園大、阿蘇南郷、花立、菊陽の各支部があり、またクラブとして囲碁、デジカメ、釣り、ハイキング、立田山散策、ゴルフ、パークゴルフ、国際交流の各クラブがあり盛況である。  同組織のこれまでの経緯や現在の様子を代表長谷川博さんと熊本学園大学支部サロンのメンバーに聞いた。 代表 長谷川博さんに聞く ――創立20周年を迎えてどうでしょうか。   ここまで発展するとは思っていませんでした。入会者は設立してからすぐの5〜6年の伸びが大きく各年100人以上でした。特に2001年は180名の入会者がありました。これはこの頃、国のe-JAPAN構想などがあったことと、これに関連して各種のパソコン講座などが開催されたこと、あとは新聞やテレビなどマスコミがかなり紹介してくれたことが要因としてあげられると思います。NHKの全国放送でも紹介されました。 ――会員の入会はこれからどうでしょうか。  2006年以降はだいたい2桁の入会者で推移しています。特に2016年は少なかった。これは熊本地震の影響だろうと思います。また最近のシニアは個人主義の人たちも多くなりシニアネットの連携になじまず入会者が減少したのかと思います。さらに定年が延長されシニアも働かなければいけなくなったこと、あとは年金が少なくなりやはり働かなければならないということで、入会して活動する暇がないことが入会者を少なくしているのだろうと推測します。ただ、孤立をなくすという入会者の要望自体は続くと思います。 ――長谷川さんがシニアネットを設立しようとした理由は何なのでしょうか。  高齢化社会、超高齢化社会になってゆく中で不足しているものは何かというところで、ちょうど1999年頃から支援が必要な高齢者に対しては介護保険、ケアマネージャーなどのいろいろな対策が出されようとしていました。いっぽう元気な高齢者が抱えている問題として孤独の問題があり、そのような人たちのQOLをどうやってあげてゆくかということを考えていました。この頃ちょうどインターネットが日本でも紹介されてきました。これを利用して高齢者の連携をはかろうと思いました。当時は高齢者にはパソコンは無理だという声が大きかったです。しかしやっている人はいて、早く発足していた久留米シニアネットなどでは会員が集まって積極的に活動をおこなっていました。私はこれに参加して熊本にもあったらいいなと思ったことがきっかけでした。そして久留米シニアネットの支援もあって1999年に組織を立ち上げメーリングリストを開設しました。初年度の会員は78名でした。 ――最初の頃の活動はどのようなものだったのでしょうか。  熊本学園大学の大学院のコンピューター棟に集まってもらってインターネットの利用体験をおこないました。インターネットを体験する前と後で聞いてみると全員がやりたいと答えました。そして実際にメールができるようになりました。それからしばらくしてパソコン教室が発足して喫茶店を利用してコーヒー1杯プラス参加費100円で定期的にサロン兼教室をはじめました。サロンはだいたい参加者10人くらいで教える人が出てきてそれが固定化してゆきました。そしてIT関連の企業の退職者の方が何人も入会して教えてくれたり機器のメインテナンスに関わってくれたりしました。また、パソコンを習った会員が新入会員に教えるという「教え合い」の体制ができました。そして花見のオフ会や女性フォーラムなどのパソコン以外の活動が始まりました。 ――現在の活動はどうでしょうか。  支部での本来の活動以外にオフ会での活動が盛んです。ゴルフクラブは発足以来年間12回、計164回にのぼります。囲碁クラブは月に1回、計139回の開催、ハイキングクラブは年10回程度開催、国際交流クラブはゲストに料理を習ったりして民族音楽を聴いたりでこれまでに24カ国の方々と交流ができました。デジカメクラブはI屋ギャラリーで写真展を開催します。その他のクラブの活動も盛んです。支部の活動でも平成支部では納涼屋形船を借りてオフ会をおこないました。天草支部は行政と連携してITの講習会をおこなっています。後は福祉部で会全体に向けて健康つくりや口腔ケアのメーリングもしています。 ――これからのことはどうでしょうか。  孤独な高齢者をなくす、パソコン教室、健康づくりなど目的の8割は達成したのではないかと思います。これからのことはあまり考えてこなかったのですが、会員に「人生の店じまい」のようなことを考えてもらう必要があるのかなと思います。各会員に自分史のようなものをデータで蓄積してもらって、デジタルアーカイブで後で見られるようなものを考えています。 学園大支部長徳留さんに聞く ――学園大支部の設立はいつですか。  2010年1月です。メールサーバーを置いている熊本シニアネット発祥の地に支部を置きたかったというのが設置理由です。 ――ふだんの活動はどのようにしていますか。  木曜日13:30〜16:00で、参加者は毎回10人ほど。今日(2019年5月23日)はまずNHK Eテレのスマホ講座番組を視聴しています。これははじめてスマートフォンにさわるという内容と、どんな種類のスマートフォンにも対応しているので皆で見るには適当だと思ったからです。そのあとは「何でも相談」ということでパソコンやタブレットなどの利用相談をおこなっています。シニアネットの趣旨に沿って皆で教え合うということで「教え合い」です。わからないところを何回でも聞けるというのが利点です。あとはお茶を飲みながら雑談したりしています。  オフ会も盛んで、皆で会員のそば打ち名人の方の山鹿のお店に行きそば打ち体験をしたり、三角に焼ガキを食べに行ったりしています。 ――他の参加者の方はどうですか。  初心者にとってワードやエクセルは難しく、ひとり自宅で学習していると失敗したり何度も行き詰まったりします。その点サロンではわからないところだけを何回でも繰り返し教えてもらえます。何回も教えてもらううちにできるようになります。それがこのサロンのよいところです。 熊本シニアネット(本部事務所) 熊本市東区花立5丁目12ー1 電話番号 096-285-7230 ホームページURL https://ksnweb.org/ 20周年記念総会の様子、前列右から2人目が長谷川代表 熊本シニアネット学園大支部の皆さん 発行所 熊本学園大学付属社会福祉研究所     〒862?8680 熊本市中央区大江2?5?1 ? 096?364?5161(代) 発行人 所長 黒木邦弘  編集人 社会福祉研究所委員会 印刷所 コロニー印刷 ? 096?353?1291 ■再生紙を利用しています。 ■揮発性有機化合物発生の抑止と紙のリサイクル性に優れた「ベジタブルオイルインキ」を使用しています。