P10~11 福祉見てある記69 テーマ オープンにケアを語りあう コミュニティづくりを目指して 本研究所研究員 黒木 邦弘 (ソーシャルワーク) 1.オープンケアエリア事業への参加  2024年12月、私とゼミ生は、福岡市で開催している「第7回オープンケアエリアふくおか」に参加しました。このイベントは、「オープンキャンパス」の発想をヒントに、ケアの魅力や社会的なテーマを自由に語り合えるコミュニティづくりを目的に実施しています。会場は福岡市内の大学で、福岡市や福岡県の後援のもと、実行委員会形式で企画・運営されています。私は福岡市の「福祉人財共働ワーキング」のメンバーでもあることから、独自の取り組みとして、発起人としてかかわっています。 2.福祉×教育の学生交流  実行委員会構成員は、福祉系大学(熊本学園大学、西南学院大学、筑紫女学園大学)×教育系大学(中村学園大学)の4大学に加え、保育園や児童養護施設などの保育系、特別養護老人ホームなどの介護系専門職が加わり、計10名で構成されています。  この取り組みでは、「教師を目指す学生」×「福祉専門職を目指す学生」の将来的な連携を見据えた学生同士の交流を大切にしています。また、学生×専門職の人材交流においては、就職説明会とは区別し、利害関係を排した自由な対話の場を意図しています。毎回、約50名程度が参加し、九州大学の学生や福岡市・九州厚生局の行政職員もオブザーバーとして参加しています。   3.交流の仕掛け  オープンケアエリアは、立ち上げ当初から次の三部構成を貫いています。 (1)実践者プレゼン、 (2)学生プレゼン、 (3)実践者と学生の語り場 (1)実践者プレゼン  毎回テーマを設定し、実行委員会関係者や外部ゲストが実践を報告します。  例えば:  ・第三回:「福祉教育」では、宮崎県日向市社会福祉協議会による、小学校授業における28単元を3学期に振り分けた福祉教育の実践を紹介。  ・第五回:NHKに番組化された地域密着型特養よりあいの森の実践を通じて、「老いに沿う」を考察。  ・第六回:宮崎県都城市の特養スマイリング・パークが取り組む、介護現場のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を紹介。  ・第七回:筑紫女学園大学・大西先生によるNHKに番組化された「生きづらさを抱えるこども・若者」の実践報告。 過去の実践者プレゼンの主な内容 第一回(2018) 福祉実践の魅力発信プレゼン~若手職員中心 第二回(2019) 特養の地域福祉実践~地域支援に係る課の設置による実践報告 第三回(2020) 地域+学校+福祉教育=未来の地域人の育成 ~地域を変えるサービスラーニングの実践 第四回(2021) 社会福祉法人の魅力と公益的な取組み ~全国社会福祉法人経営青年会の実践 第五回(2022) 「今」を楽しむ~NHK「よりあいの森老いに沿う」を通して 第六回(2023) 介護の未来を切り拓く! DX によるイノベーションの波~デジタル改革で拓く福祉の新たな可能性~ 第七回(2024) 生きづらさを抱えるこども・若者の理解とその支援  ~公園での夜回り・まちの保健室の取り組みを中心に~ (2)学生プレゼン及/(3)語り場  学生プレゼンは、4大学の福祉学・教育学系学生が、自身の関心や研究テーマ、実践経験について報告します。その後の語り場では、学生間・実践者間の対話を促し、多様な視点で交わる貴重な時間となっています。   4.警固公園での夜回り・まちの保健室に参加  終了後、私たちは福岡市天神の警固公園へ移動し、大西先生指導のもと、「夜回り・まちの保健室」の活動に参加しました。クリスマスが近づく中、イルミネーションが灯る公園には多くの子ども・若者が集まっていました。過去には飲酒や喫煙、オーバードーズ状態にある子どもや性被害のリスクにさらされている子どももいたことから、ゼミ生は緊張しながらも、2~3名ずつに分かれて、小中高らに声をかけ、傾聴や対話を重ねたうえで、医師が待機する「まちの保健室」へ案内しました。 -ゼミ生の感想を紹介します。 「今回、警固公園に集まる子ども達の現状と課題について知り、これまで画面上の世界でどこか他人事のようだった現実を突きつけられました。そして、子ども達の声を聞いて、改めて非行少年という言葉にバツのレッテルを貼るのではなく、その背景に隠された苦しみや孤独・不安に向き合い、その子の環境から目を向けて支援して行く必要があると思いました。一筋縄では行かない支援になると思いますが、自分にできる事をやりたいと強く思います。」 5.最後に  この取り組みを通じて、実践から問いを立てること、関心をもって調べて自分で考えること、何より、テーマを持つことの大切さを考えてほしいと思います。 若手職員と交流する学生たち 「まちの保健室」のある警固公園安全安心センター