P10~11 福祉見てある記71 テーマ 熊本のヤングケアラー支援のいまを訪ねて -熊本県ヤングケアラー相談支援センター/熊本市若者・ヤングケアラー支援センター- 本研究所嘱託研究員 岡村ゆかり(社会福祉学)  新生活の喧騒が少し落ち着き、梅雨入りを間近に控えた2026(令和8)年初夏、「熊本市若者・ヤングケアラー支援センター あうる」を訪ねました。今回お話をうかがったのは、同センター長の木村純子氏(社会福祉士)、「熊本県ヤングケアラー相談支援センター」のヤングケアラー・コーディネーター佐々木智里氏(精神保健福祉士、社会福祉士)、そして、運営を担う学校法人松本学園(玉名市)の畠本靖子氏(法人本部総務部長)の3名です。現在、熊本県内には県と市がそれぞれ1ヶ所ずつ、計2ヶ所のヤングケアラー支援センターが設置されており、いずれも同法人が委託を受けて運営されています。 1.センターの概要と法的な位置づけ  ヤングケアラーは、2024(令和6)年6月に改正された子ども・若者育成支援推進法において「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」(法第2条7)として支援対象として明記されました。これを受け、全国的な支援の動きがみられます。  熊本県内ではこれまでも子どもや若者支援は行われてきましたが、新たに「ヤングケアラー」という名を冠したセンターとして、2022(令和4)年7月に県が先駆けて開設し、その後2024(令和6)年10月には市にも開設されました。県は「子ども・若者総合相談センター」と「ヤングケアラー相談支援センター」が別組織として設置されていますが、市は一つのセンター内で一体的に対応しています(今回は、ヤングケアラーのことを中心にお話をうかがいました)。 2.相談状況~小学生から40代まで、幅広い年代に寄り添う  「本人から直接SOSを寄せられるよりも、学校や関係機関など周りの関係者を通じて相談につながるケースが多い」と、現在の相談状況を語ってくださいました。2025(令和7)年度の相談件数は、県が延べ222件、市は延べ281件にのぼりました。  支援の対象は小学生から40代までと幅広く、継続的な伴走を必要とするケースも少なくありません。その一方で、20代以上の「元ヤングケアラー」のなかには、自らの経験を生かしてピアサポーターとして活動したり、講演会に登壇したりと、次世代の支え手として貢献する心強い循環も生まれていました。 3.相談体制と見えてきた課題  両センターは、電話・メール・来所・訪問など多様な窓口が設けてありますが、県と市では少し体制が異なります。 【熊本県ヤングケアラー相談支援センター】 ・職員体制:1名(ヤングケアラー・コーディネーター) ・主な相談方法:SNSや訪問による対応が中心 【熊本市若者・ヤングケアラー支援センター あうる】 ・職員体制:6名(常勤:ヤングケアラー担当1名 若者担当2名、非常勤3名) ・主な相談方法:SNSを入り口として、面談や電話、訪問支援へつなげる  両センターとも個別支援にとどまらず、学校や行政と連携しながら、ケース会議や要保護児童対策地域協議会への参加などを通じたアプローチも行われています。  また、日々の実践を通して見えてきた課題として、次のようなジレンマを語ってくださいました。 〇「義務教育後」の孤立:卒業などで、子どもたちの所属する場所(学校)がなくなると、周囲から状況が見えづらくなり、つながりにくくなる。 〇「親の同意」という壁:例えば、ケアを必要とする親に福祉サービス利用を勧めても、本人の同意を得られないことで手続きが進まず、結果として子どもの負担軽減につながらない場合がある。 訪問を終えて  今回は、「センターの存在を広く知ってもらいたい」という皆さんの思いをうかがうとともに、県内のヤングケアラー支援の現状を深く知る機会となりました。  ヤングケアラー問題は、家庭という私的な空間での出来事です。それゆえに、周囲の目は「ケアを必要とする家族(親など)」に向きやすく、子どもが担っている過度な負担は見過ごされがちです。また、その負担を担っている子ども自身でさえ、自分の状況を「特別なもの」として認識していない場合もあります。両センターは、日々葛藤を抱えながらも、子どもや若者たちが孤立しないための「つながり」を地域のなかで紡ぎ出そうとしています。 「熊本市若者・ヤングケアラー支援センターあうる」の外観 センター内部① 面談スペース センター内部②