P12 〈一冊の本〉 「新時代の子ども家庭福祉―理論と実践―」 伊藤良高・出川聖尚子編 本研究所嘱託研究員 伊藤 良高1 (保育学・教育学) 註1:熊本学園大学名誉教授  当方がシニア客員教授として籍を置いている熊本学園大学社会福祉学部子ども家庭福祉学科は、2026年4月に創設20周年を迎えた。同学科は、急速な少子化の進行並びに家庭及び地域を取り巻く環境の変化に伴い、子どもの心身の健やかな成長・発達、自立をめぐる状況が大きく変化するなかで、社会のニーズを踏まえ、日本初の子ども家庭福祉の名を冠した学科として、また、県内初の4年制保育者、保育・児童ソーシャルワーカー養成校として誕生した(2006年4月。初代学科長は当方)。従前までの保育・幼児教育・児童福祉のみならず、社会福祉・地域福祉という視点から、子どもと家庭の幸福(ウェルビーイング)の同時的・統一的保障を目指して、保育士・幼稚園教諭・社会福祉士をはじめ、地域における全ての子どもとその保護者、家族を応援することができる人材の育成を目標とした1)。  子ども家庭福祉とは、文字通り、子どもと家庭の福祉をキーワードとするものであるが、子ども、子育て家庭、地域社会をホリスティックにとらえ、子どもと子育てをトータルに支援することを特徴としている。子どもの育ちや生活に関する問題は、父母その他の保護者、家族のあり方、更には、地域社会の問題であるととらえられ、子どもの幸福の実現を原点としつつ、保護者、家族、地域住民が各々幸福であること、すなわち、健康で文化的な生活を営むことができる環境を構築していくことを目指している。「こどもまんなか社会」の実現が叫ばれる今日、当方らは、学科創設20周年を記念して、これまでの子ども家庭福祉の歩みを振り返りながら、現代における子ども家庭福祉の理論と実践について総合的に考察し、子ども家庭福祉学の世界をリードする新たな書籍を発行することにした2)。  本書は、近年、こども基本法(2022年6月)を基点に、「こども」をキーワードとするこども施策・こども計画が策定され、様々なこども・若者支援策が展開されるなかで、これからの子ども家庭福祉(ないし、若者支援を視野に入れた「こども家庭福祉」)に求められるものは何か、どうあるべきかについて、そのグランドデザインを構想しようと企図したものである。本書の大きな特徴として、当方及び出川聖尚子両編者ほか学科・学部所属教員をはじめ、子ども家庭福祉の第一線で全国的に活躍している研究者・実践者が、子ども家庭福祉の現状と課題について、最新のデータや事例(諸外国を含む)を駆使しながら理論的かつ実践的に考究している。新時代の子ども家庭福祉の展望を切り拓こうとする意欲的な論稿(論文・コラム)集である。お時間のあるときにご一読願えれば幸いである。 〈注〉 1)伊藤良高「子ども家庭福祉学科創設20周年」熊本県保育協会編『保育くまもと』2026年4月号。 2)学科創設時には、創設記念として、伊藤良高・中谷彪編『子ども家庭福祉のフロンティア』(晃洋書房、2008年4月。「新版」2015年4月。「改訂新版」2020年4月)を発行している。 発行所 熊本学園大学付属社会福祉研究所     〒862?8680 熊本市中央区大江2-5-1 096-364-5161(代) 発行人 所長 高林秀明  編集人 社会福祉研究所委員会 印刷所 コロニー印刷 096-353-1291