2021年度
第二 地域発展と環境調査事業
・生態系環境調査・生活中の重金属分析(中地重晴)(研究協力者:エコネットみなまた)
水俣地域の市民の研究団体である「みなまた地域研究会」と共同して、地域における生業と環境汚染の市民調査を実施し、水俣病をふまえた水俣地域の未来を考える活動を実施してきた。この市民協働を発展させ、環境汚染の実態を客観化するために、住民の食生活を通した水銀の摂取状況を調査する。海の幸を主とする住民の日常の食事を回収し水銀含有量を測定するとともに、毛髪水銀調査によって日常生活における人体への汚染の現状を明らかにすることとしていたが、COVID-19の影響で、現地での調査に着手できなかった。
一方、過去の水銀汚染のデータを収集し、解析してきたところ、胎児性水俣病世代の互助会訴訟弁護団から、ある原告の臍帯メチル水銀値について、測定方法と測定結果の評価について依頼を受け、水俣病解明初期、1950年代後半から70年ごろまでの臍帯中メチル水銀測定方法の信頼性について、検討し論文にまとめた。「水俣病究明初期の臍帯中水銀濃度分析に関する論考」(中地重晴、熊本学園大学、水俣学研究、11号、pp.3-18、(2022))
また、水銀に関する水俣条約にある汚染サイトの修復に関連して、チッソの産廃最終処分場である旧八幡残渣プールの隣接する海岸埋め立て計画(水俣湾河口地域振興計画)の課題について、問題整理を行った。2022年3月にバリ(インドネシア)でハイブリッド開催されたCOP4(第4回締約国会議)のサイドイベントで、中地がオンラインで報告した。
こうした生活環境における水銀汚染の現状把握が政策提言の客観的根拠を提供し、汚染サイトとしての水俣地域のリスク評価に対し、水俣社会がどのような取り組みを行うのか参与観察を行う。
・自然資本を最大限に活用したレジリエントで持続可能水俣・芦北地域の再構築(宮北隆志)
水俣市周辺に予定されている大規模風力発電所(4事業者、総計64基)の建設計画に伴う環境、並びに健康影響に関して問題点を整理・提示するとともに、大規模開発と地域における分散型エネルギー自給・自立の在り方についての再生可能エネルギーのガバナンスという視点から問題提起を行った。
現在、水俣市内に、巨大風力発電に反対する住民組織が3団体あり、住民団体からの依頼で、建設計画や環境影響評価に関する問い合わせがあり、宮北、中地が学習会で講師を務めた。今後も住民組織と連携して、調査研究を進めていく。
・海外調査研究(宮北隆志)
一昨年、研究交流協定を結んだ北タイのMAE FAH LUANG UNIVERSITY (MFU)との共同研究(テーマ:災害レジリエンス学習の理念と実践)に着手する。COVID-19の感染拡大に伴う本学の感染防止方針に従い、海外での調査は次年度に延期せざるを得なかった。
・ゼロ・ウェイスト円卓会議の活動(藤本延啓)
13年にわたって参与観察を続けている「ゼロ・ウェイスト円卓会議」は、時機を見てすみやかに開催することとしていたが、今年度はCOVID-19の影響で、開催できなかった。