水俣学プロジェクト3

2022年度

第三 資料収集、データベース化、公開促進
今年度は以下の取り組みを行い、成果を発信した。(研究協力者:山下善寛、徳永常喜、緒方紀明(元新日窒労組組合員・山下はこのほか水俣学研究センター客員研究員も務める)。
・新日窒労組旧蔵資料細目録の順次更新
2009年から公開している新日窒労組旧蔵資料は、簿冊の一紙ごとに、細目録番号・目次番号・形態分類・主題分類・表題・作成者・作成年・排列年・資料種別・記録形式・法量・数量・副本・備考の入力を行ない、毎年更新している。本年度も更新に向けて作業を進めた。
・原田正純旧蔵資料の新規公開
本資料は、胎児性水俣病を世界で初めて体系的にまとめた神経精神科医師の原田正純が熊本大学時代から蒐集したものである。その内容は、検診カルテ、ヒアリング資料、身体状況や生活状況を映した映像や音声リールなどがあり一級資料である。
同資料は水俣病研究のほか、砒素中毒調査、一酸化炭素中毒患者調査資料、精神科患者の脳波や映像などが含まれており、水俣病事件史研究のみならず他分野の研究者に公開が待たれている資料である。
資料のうち、映像フィルムは劣化が著しかったため、メタデータを作成後、優先順位の高い映像を選出し、フィルム修復作業を行った。当初の研究計画になかった修復作業時間と費用が発生したため、2023年8月に紙資料と映像資料のみ公開予定にしている。映像資料は、データ変換後、映像を確認したうえで当センター運営委員会において倫理上の観点から検討を重ね目録上に公開するか判断する。
・深井純一旧蔵資料の新規公開
政治経済学者であった深井純一(1941-2012)の所蔵にかかる水俣病関連資料が含まれる資料である。本年度、メタデータのみの公開に向けて準備をすすめたものの、先の原田正純旧蔵資料が当初の予想に反し、膨大な作業量であったため、本資料の作業が遅れ、2023年7月をめどに公開となった。
・土肥旧蔵資料の新規公開
土肥秀一(元熊本商科大学教授)の所蔵にかかる水俣病関連資料が含まれる資料である。今年度メタデータのみの公開に向けて準備をすすめる計画であったものの、原田資料の映像修復費が必要になったため、本資料の公開は次年度以降とすることとなった。
・松本勉旧蔵資料の音声データの公開
カセットテープをデータ変換し目録上に順次公開している。このことが、利用促進につながるばかりか、言語学など他分野の研究へ寄与できると考えている。
・水俣病研究会蒐集資料の細目録公開
既に公開している水俣病研究会蒐集資料は、2016年熊本地震後、文書箱に保存していなかったため再整理する必要があった。また、熊本大学に1986年以前の資料がありその複写に5年の歳月がかかり、両者を合わせたメタデータを2023年10月に公開する予定である。

 

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