平成27年度文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(研究拠点を形成する研究)に選定されました。
水俣学研究センターによるプロジェクト「水俣病の経験を将来に活かした地域構想と国際的情報発信のための水俣学研究拠点の構築」が文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(研究拠点を形成する研究)に選定されました。
研究プロジェクトの概要
事業名:「水俣病の経験を将来に活かした地域構想と国際的情報発信のための水俣学研究拠点の構築」
事業取組主体:熊本学園大学水俣学研究センター
研究代表者:社会福祉学部・教授・花田昌宣
参加研究者数:本学から10名、学外から11名
採択 平成27年度採択(研究機関H27~H31)研究テーマの概要
本研究プロジェクトは、人類の負の経験としての水俣病事件を鏡として、教訓を未来に活かすための研究基盤の形成を目的としている。水俣病が長い間、医学や一部の専門家によってのみ扱われてきたことの反省に立ち、医学のみならず、社会学、経済学、法学、社会福祉学、人類学からメディア研究や理工学にいたるまでの多様な学際分野の研究者たちが、地元の研究協力者や住民の協力を得て進める学際的でオープンな研究体制を構築する。また、国際的なネットワークによる国境を越えて研究を進める。研究課題は、(1)社会科学的視点を取り込んだ被害の全容の解明、(2)被害の経験をプラスに転化するために将来に向けた地域再構築戦略、(3)研究資料の収集とデータベース化による情報基盤形成と水俣学アーカイブスの構築、それを通した成果の発信によって構成されている。
水俣学研究とは、現地に密着し、専門家と素人および学問領域の壁を越え、過去の失敗に学び将来に活かすという方法的観点から、水俣病によって負の影響を受けた住民および地域社会の課題の析出と修復に取り組み、環境問題の教訓と視座を与えるものである。そのために以下三つの研究調査班が有機的につながって学際的な探求に取り組む。<第1班:水俣病被害の多面性に着目した問題解決のための包括的研究>
被害実態の広がり(医学面のみならず社会的側面から)の把握に努め、現在の課題を明らかにする。病いを社会的なものとしてとらえ、医学的な疾患学・症候学から解き放ち、社会環境の中に再定置し、改めて被害実態を明らかにする。そのために臨床・疫学調査、被害民/地域住民の社会福祉学的実態調査と補償と救済をめぐる課題の析出、被害住民のナラティブの収集と分析が組み合わされる。
到達目標:水俣病の被害と救済補償に関する実情把握と望まれる方向性の提案<第2班:環境負債を克服し地域再構築にむけた評価および民主主義的合意形成をめざす社会的実証研究>
水俣病の経験をふまえた地域戦略形成の目標(QOLの向上と社会的紐帯の再建)実現のための住民を巻き込んだ実証研究を行う。①地域の社会経済の現状把握と活性化の方途、②環境汚染(水銀汚染サイト)の実態把握と修復方法の研究、③海外の公害被害発生地域の経験分析と共有化、④地域における社会福祉と社会政策的課題の検討を行う。
到達目標:地域再生のための基礎資料およびフレームワークの呈示と地域戦略の提言<第3班:水俣学アーカイブスを通した知の集積と国際的情報発信拠点の形成>
第1、第2班の調査研究を媒介としながら、水俣病に関わる文献資料データベースの高度化と豊富化を行う。地域に散在する資料の収集・整理と公開、水俣病に関する映像アーカイブの構築、患者・関係者の証言の蒐集、解題を加えた水俣病研究文献目録の制作を行う。それらを国内外に発信し、広く研究者に利用可能な情報基盤を構築する。
到達目標:将来にわたる水俣学研究の情報基盤の構築と共有、成果の国内外への発信と人材育成。
水俣病に関する総合的研究拠点の構築をとおした、若手研究人材および地域の人材の創出、水俣病をはじめとする公害・環境問題に関して国内外からの受け入れができる総合的な国際的教育・研究センター、教訓の発信と地域再構築の地域社会モデルの提言、これらをとおして海外とのネットワークが形成・強化され、事件発生から地域再構築にいたる経験の教訓化を通して、開発途上国を中心とした公害発生地域へ貢献することができる。「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」とは、大学の経営戦略や研究戦略に基づき、各大学が特色を生かした研究を実施するため、その研究基盤の形成を支援する事業であるとともに、わが国の科学技術の発展に資するものです。(文部科学省「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」より)
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/002/002/1218299.htm
投稿の開催スケジュール
平成22年度~平成26年度「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」研究成果報告書をアップいたしました。
平成22年度~平成26年度「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」
プロジェクト番号:S1091061
研究成果報告書
「人類の負の遺産としての公害、水俣病を将来に活かす水俣学研究拠点の構築」2015年1月の事後評価におきまして、最高の「AA」(2名の私立大学戦略的研究基盤形成支援検討委員会委員による評価がともにA評価(優れた研究成果を上げている)を頂いたことは、すでにご報告いたしました。
この度、2010~2015年度までの成果を報告書としてまとめました。関心のある方は、ご覧ください。PDFでは、報告書本文と資料編がございます。容量の関係で三つに分けて掲載しております。
『水俣学研究』第6号 足立明先生追悼号を発刊いたしました。
研究員一覧を更新いたしました。
水俣学アーカイブス:患者証言を新たに公開しました
水俣学アーカイブスは、2014年12月8日から水俣学研究資料文献データベースおよび映像資料を通して、水俣学の取り組みの一端をご理解いただくために公開をはじめました。
構成は「証言」「自然」「教育」「記録」「未来」となっており、本日から「患者証言」で上村好男さんの証言映像を公開いたします。
上村さんは、証言のなかで写真家・塩田武史さん(享年69)が上村さんの長女、智子さんを撮影された写真を使用されました。長女、智子さん(享年21)は、ユージン・スミスさんの写真「入浴する智子と母」で水俣病の悲劇の象徴として世界的に有名になりましたが、智子さんの他界後「ゆっくり休ませてあげたい」というご両親のお気持ちに沿って、智子さんの写真を使用した新たな展示、出版等は行わないことが約束され、水俣学研究センターも使用を控えておりました。今回の公開にあたり、智子さんの人生と上村さんの水俣病の経験を後世に伝えていくために、智子さんの写真を挿入することに上村さんのご了解をいただくことができました。また写真は、撮影された塩田さんのご遺族のご厚意で使わせていただいております。多くの方のこころに上村好男さんの語りが引き継がれ、智子さんのいのちが宿ることを願っております。
下記のURLからご覧いただけます。
https://gkbn.kumagaku.ac.jp/minamata/marchives/patient_7224.htmlまた、右側の水俣学アーアイブス、患者証言から、ご覧ください。
平成27年度科学研究費助成事業採択結果のご報告
平成27年度 科学研究費補助金採択結果
水俣学研究センターで本年度採択された科学研究費補助金は以下の4件と継続が2件である。平成27年度 新規採択
◎研究種目:基盤研究(B)
研究代表者:花田昌宣
研究課題名:水俣病被害とその影響をふまえた水俣地域市民社会の再生に関する総合的研究
補助事業期間:平成27~29年度◎研究種目:基盤研究(C)
研究代表者:井上ゆかり
研究課題名:水俣病多発漁村住民の水銀暴露と健康障害および補償給付の連環の実証的研究
補助事業期間:平成27~30年度◎研究種目:基盤研究(C)
研究代表者:田尻雅美
研究課題名:生の視点からとらえた水俣病当事者の社会福祉的ニーズの表出と実現に関する研究
補助事業期間:平成27~31年度◎成果公開科学研究費(データベース科研)
研究代表者:花田昌宣
データベース名称:水俣学研究文献アーカイブス
補助事業期間:平成27年度継続
◎研究種目:基盤研究(B)(海外学術調査)
研究代表者:宮北隆志
研究課題名:タイ東部臨海地域における工業化・地域社会の変容と健康の社会的決定要因に関する研究
補助事業期間:平成25年~27年◎研究種目:基盤研究(C)
研究代表者:藤本延啓
研究課題名:不法投棄に関する社会史研究―豊島地域社会に対するミクロ-マクロリンク的視角から
補助事業期間:平成25~28年
水俣学研究センターブックレットNo.13『いのちをつなぐ ~水俣、福島、東北~』を発刊いたしました。
「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」事後評価(平成26年度実施分)に係る研究成果評価において「AA」評価を受けました。
2015年1月19日、熊本学園大学水俣学研究センターは、平成22年度~平成26年度までの事業を実施しておりました文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「人類の負の遺産としての公害、水俣病を将来に活かす水俣学研究拠点の構築」における事後評価におきまして、最高の「AA」(2名の私立大学戦略的研究基盤形成支援検討委員会委員による評価がともにA評価(優れた研究成果を上げている)を頂きましたのでご報告いたします。
総合所見でいただいた内容
◎総合所見( A )
・地域での相談事業や国際発信、国際的な公害問題の協力への協力、共同調査などたんなる研究プロジェクトを超えて、水俣学を追求しようという高いモチベーションを感じる。報告書もそうした意気込みを感じるものであり、とても論理的に構成されており読みやすい。
・研究基盤形成にふさわしい、非常に意欲的な取り組みであると高く評価したい。
◎総合所見「A」(優れた研究成果をあげている)
・カナダ、タイ、台湾、中国等での公害発生地域との国際的ネットワークが形成されており、日本の水俣の経験が人類に共有され問題解決の参照点になることに貢献したプロジェクトと言える。水俣学研究センターは、本評価を受け、これまで以上に地元に密着した調査、研究に努めたいと存じます。
浜元二徳旧蔵資料目録を公開しました
浜元二徳旧蔵資料(1936−)は、水俣市で両親とともに漁業に従事し、水俣病第一次訴訟の原告で、今も水俣病の経験を語り継がれている方の資料です。資料整理を終え、2015年1月19日からHPのデータベース上に資料目録を公開しました。近日、資料画像(マスキング加工済)を資料目録に公開予定です。公開後、トピックスで再度ご案内いたします。データベース検索からご覧いただけます。
1月22日水俣学講義「世界の水銀汚染と水俣病 カナダ調査の報告」花田資料をアップいたしました。